項目書を100%にするのが目的ではない。品質の高いゲームを一緒に創るという考え方|株式会社Craft Egg

更新日:2022/07/11

プロフィール

株式会社Craft Egg
プロジェクトマネージャーアシスタント
QAチームマネージャー
キャラクター演出チームマネージャー
松橋 正樹 様
URL: https://www.craftegg.co.jp/

「人生を豊かにするコンテンツをつくる」をミッションに掲げるCraft Egg様。
弊社のQAサービスをご利用頂いております松橋様に、開発で大事にされていることや、
印象深かった出来事などをお伺いしました。

もっと視野を広めたいとQAの武者修行をした20代

もっと視野を広めたいとQAの武者修行をした20代

――リズムゲームで有名な株式会社Craft Egg様にお伺いしております。弊社のQAサービスについて、評価や印象など率直なご意見を伺いつつ、Craft Egg様の目指す品質や大事にしているポイントなどお聞きしていきたいと思います。
※QA・・・品質保証

松橋氏: はい、よろしくお願いします!

――まず初めに松橋様の所属されている部署、担当業務をお聞かせください。

松橋氏: QAのマネージャーと兼任で、キャラクター演出チームのマネージャーとプロジェクトマネージャーのアシスタントを担当しております。QAの体制としては、私を除くとリーダーが1名とメンバーが3名の計4名体制となります。

――ありがとうございます。業界経験が長いとお聞きしておりますが、松橋様の略歴を教えていただけますか。

松橋氏: 20代前半でデバッグの業務委託の会社に初めて入社しました。私にとって一番初めのゲーム関連会社になります。そちらで4年ほど勤めていましたが、もっとQAの視野を広めたい、修行したいと考えて転職することを決めました。その後は短期で色々な会社に勤めまして、他社のQAがどういったことをしているのか、武者修行みたいな感じで経験しました。前職でスマートフォンのゲーム開発を行っていたことから現在のCraft Eggに転職したという形になります。
※デバッグ・・・ゲーム業界ではソフトウェアテストのことをデバッグと表現

――松橋様がQAを担当されることになった経緯を教えていただけますか。

松橋氏: 前職でもスマートフォン向けアプリケーションのQAに携わっていたのですが、スマートフォンのゲームが出始めた頃だったので、体制がまだしっかりと出来上がっていませんでした。6年ほど在籍している間に組織も出来上がってきて、それなりにしっかりした体制が築き上げられた訳ですね。ところが私のスタンスとしては、ルールをガチガチに固めた中でその通りに動き続けるのが得意ではなくて、新しいことをやりたいなという気持ちの方が強くなっていきました。前職でも何か新しいチャレンジは出来たとは思うのですが、心機一転、新しい会社でQAの体制が出来上がっていないところで、一から体制を築きあげたいなと思い転職した訳ですね。Craft Eggではゲームをリリースして間もなかったこともあり、QA体制もまだ整っていなかったので、私がQAの基盤を作るというところを初めのミッションとして入社した形になります。

お客さまにとって楽しいことをみんなで考え、つくる文化

――QAの基盤を作るところで一番苦労したことは何でしょうか?

松橋氏: そうですね。まず初めに意識したのはQAとして主体的に動くにはどうしたらいいかという考え方を作るところですね。プロジェクトマネージャーに言われたから動くのではなく、QAとしてこれをやりましょう・あれをやりましょうといった提案をしていく必要がありますが、他のセクションの皆さんはあまりQAのことを知りません。考え方やアプローチの仕方をまず広めるところからが大変で、一人一人に説明していくのは結構時間がかかりましたね。QAとは何たるものかという事を浸透させるのに、一番初めは時間がかかったかと思います。

――作品を開発する上で大事にしているところを教えてください。

松橋氏: Craft Eggは「みんなでつくる」といった文化があります。例えば企画者だけが企画を立てる訳ではなくて、企画者は大まかな計画を立てて、チームの全員がそれを聞いて意見を出していきます。さらに企画チームだけではなく他のセクションの意見も取り入れたうえで、お客さまにとって何が一番いいことなのか、楽しいことなのか、ということを考えていますね。会社によってやり方は違うと思いますが、QAだから安全性だけを担保していればいい、という訳ではなくて、全セクションがお客さまにとって楽しいことを考え、気軽に提案したり意見したりと自由なところがありますね。

――弊社とやり取りをする中でも情報の出し方について配慮していただけている印象が強いのですが、何か意識されていますでしょうか。

松橋氏: そうですね、そこは特に意識しているところです。自分が元々QAをやってきましたので、テスターさんが理解しやすく動きやすくなる情報の出し方を考えています。例えばテストケース一つをとっても、順番通りに検証できるように整理するなど、どうすれば効率よく早くテスターさんに理解いただけるか工夫することは、私がQAをやっていたからできる配慮かなとは思いますね。

IMAGICA GEEQはパートナーという存在

――弊社のQAサービスをご利用いただいている印象を教えてください。

松橋氏: いつも凄く配慮していただいているのが印象的です。日毎の依頼人数が今日は5名、明日は15名と変動が多い時もあるのですが、気軽に「大丈夫ですよ」と言ってくれるのはすごくありがたいです。
仮に人数が多い依頼の時は「無闇に人数を増やしても、仕様を一から覚える必要があって効率が悪いので、明日はこの人数が一番いいと思いますよ。」といったアドバイスをいただけるのは助かりますね。
IMAGICA GEEQさんとしては、依頼人数の多い方が嬉しいじゃないですか(笑)
ですが私どものことを考えて、アドバイスしてくれているのは大変助かっています。プロジェクトのパートナーといった印象が強いですね。

松橋氏: 2つ目は現場の皆さんの話になります。私はあまり堅苦しい感じは好きじゃないんですが、IMAGICA GEEQさんはとにかく元気良く挨拶や応対をしてくれるというところが嬉しいですね。それが私どものモチベーションにもなりますし、こちらのスタンスに合わせていただいているという印象が強かったです。

松橋氏: 3つ目は「言われたことをやるだけじゃないところ」が印象に残っています。項目書が100%実施できれば終わりといった会社さんも多いと思います。けれどもIMAGICA GEEQさんはプラスアルファとして、仕様書通りのチェック結果であったとしても「前回とレベルデザインが違いますよ」とか、企画面についても意見を言ってくれますよね。項目書を100%にするのが目的ではなくて、良いものを創るという目的で動いてくださっていると感じました。Craft Eggからの依頼にしっかりと対応した上で「チェックの薄い箇所をもっと見た方がいいじゃないですか」とか、本来の作業とバランスを取りながらコミュニケーションをとってくれるのはとても大きいなと思っています。

――これまでで特に印象に残っている事例などはありますでしょうか。

松橋氏: 昨年の話ですが、新しいイベントのスキームを開発していました。期限が決まっている中で開発もQA期間も本当に時間がありませんでした。大変申し訳ないのですが、IMAGICA GEEQの皆さんには残業や休日出勤にもご協力いただきました。かなりハードな状況だったかとは思いますが、最後までモチベーションを落とさずに元気にやっていただけたのはとても印象的でしたね。

私のミスでもあるのですが検証観点に漏れがありまして、検証期間中に見つけられていない不具合が最後まで残っていました。しかし最終日に見事に指摘していただきまして、大きな新しいイベントで本番の不具合が0件という結果でした! 大きなリリースではなくても不具合0件というのは本当に難しいことです。テキスト一つ間違っても1件になりますからね。大きなイベントで不具合が0件だったのは本当に当社にとってもIMAGICA GEEQさんにとっても凄く嬉しいことだったのではないかなと思っています。これは特に私の中でも記憶に残っていますね。

もう一つ記憶に残っているのはコロナ禍の緊急事態宣言です。正直なところIMAGICA GEEQさんは稼働できるのかなと心配がありました。最悪の場合は、開発者を全員集めてデバッグするしかないかなぁって思っていましたが、VPNなどの準備をしていただき、結果的に何の影響もなくQA業務を続けられたのは非常にありがたかったですね。

ユーザーファーストを意識してQAに生かす

――それでは弊社の今後の課題点があれば教えていただけますか。

松橋氏: 普段からよくやっていただいているので、強いて言うならですが、他社のQA業務で培ったノウハウをCraft EggのQAでも生かせたらいいなと思っています。もちろん他社の情報を出す必要はありませんけどね。

――そうですね、現在も機種固有の不具合情報や、他社様の案件で起きている観点漏れなどノウハウを現場で随時共有しています。各社様に対してノウハウを生かしてご提案内容を強化していきたいと思います。

――現場スタッフの声を集めてみるとユーザーを非常に大事にしていると感じておりました。ユーザーアンケートで多数あった意見を積極的に反映してくれているということですが、やはりユーザーを大事にするところは非常に肝になると考えているのでしょうか。

松橋氏: 私だけではなくてCraft Egg全員がお客さまを大事にする「ユーザーファースト」を一番に考えています。それをQA的にどう生かすかというところは意識してやっていますね。

――IMAGICA GEEQが参加しやすい環境を整えてくれており、質問に対するレスポンスが早く、資料の共有についても内容と質を含めてメンバー達は非常に感謝しておりました。

松橋氏: そうですか、ありがとうございます。齟齬のない情報の共有は双方にとってメリットがあると思っています。少ししか情報が出せなかったら、その範囲内での作業しかやっていただけないと考えていて、こちらにとってもメリットはありません。しっかりと情報を共有した上で、感性や経験の違うテスターの皆さん一人一人から出てくる閃きが大事だと思っています。結果的に全体の不具合の件数が収束するのも早くなると思っていますので、出来る限りの情報を出して皆さんに考えてもらっていますね。

品質を高めるための教育体制と自動化ツールへの取り組み

――では、私どもから多数質問をしたのですが、松橋様からIMAGICA GEEQへの質問があれば伺えますか。

松橋氏: ここ10数年でゲームのデバッグ会社が増えてきたと思います。やはりゲームの情報量が増えてきたことで、どうしてもデバッガーの力が必要になってくるのですが、IMAGICA GEEQさんの中で他社との差別化や自慢できるポイント、大事にしていることはありますか?

――弊社ではリーダーの負担軽減に力を入れています。社内には他社での経験者もいるのですが、他社ではリーダーのマンパワーに頼るケースが多いと聞きます。IMAGICA GEEQでは出来るだけリーダーに負担が掛からないよう、テスターが一定レベル以上の作業をできるようにするための教育に力を入れていますね。項目書の不備や抜けにもテスター自身が気付けるようにしていたり、必要なこと・不明点含めて必ず気づけて確認できる。テスター個々の自走力が高いと、リーダーの負担も軽減されて管理作業に集中できると思います。その結果、QA体制の安定と品質強化につながりますので、お客さまに満足してもらえる成果が出せるようになっていますね。

松橋氏: やはり教育ですね。新しいリーダーにも意欲的にチャレンジさせて、すごいスピードでリーダーを増やせている印象もあって、確かにその点はIMAGICA GEEQさんの強みかもしれないですね。

――部内にはシステムチームというエンジニアが所属しているチームがおります。QA作業に役立つツールやテスト自動化のツールなども作成していますよ。

松橋氏: おー、それはすごいですね!

――動画や画像のキャプチャツールや圧縮変換ツール、同じ動作を繰り返す作業を自動でキャプチャ操作するツールや、テキストチェックの自動化ツールなども揃えています。

松橋氏: 自動化ツールで工数が下がるとコストが安くなってしまうと思うのですが、それはIMAGICA GEEQさんの優しさですかね(笑)

――これは努力の賜物だと思っていただければと思います!

松橋氏: QA体制で言うと海外などにも拠点はありますか。

――ネイティブスタッフは在籍しています。拠点としては東京・大阪・新潟ですね。ローカライズのご依頼はパートナー企業と連携していまして、今後も規模拡大に向けて拠点を増やす計画がありますのでご期待ください。

松橋氏: 新しい人を採用して増やさなければいけないと思うのですが、他社と違う教育体制はありますか。

――新人の場合は、まずQA業務の考え方から丁寧に教えています。不具合を見落とした時のリスクについては、お客さまだけではなくてユーザーまで迷惑をかけてしまうことを教えつつ、実技の部分も取り組んでいます。テキストチェックなどの考え方や実際のチェックのやり方、テストケースごとのテスト実施の練習ですね。バグを仕込んでおくので、バグレポートの書き方なども学ぶ形です。そしてやはり重要なことは不明点・分からない事は必ず確認するということを、癖付ける・身につけるということに重点を置いて教育していきます。

松橋氏: なるほど、とてもいいですね。専有の研修期間をしっかりと取っているのですね。

――専任の教育者も立てているので、リーダーの負担にならないための取り組みの一つにもなりますね。

松橋氏: 現場で教えてもらうと、どうしても現場の先輩やリーダーの経験で喋ることになるので、初回教育のステップとしてはばらつきが出ますよね。専任者が画一した内容を教えるというのは非常にいいことだと思います。

お客さまに合わせて最適な体制を柔軟に提案していく

松橋氏: IMAGICA GEEQさんのリーダーにCraft Eggへ来ていただいて、そこから拠点メンバーに指示を出すという形態もあると思います。常駐せずに全員がIMAGICA GEEQの拠点で作業をやるのとでは効果は違いますか。

――そうですね。情報を外に出すためのお客さまの体制やシステムによって変わってきます。体制が整っている会社様であれば常駐不要だと思いますが、外に情報を出す体制に慣れていないお客さまも多いので、そういった場合にはリーダー1名を常駐してハブ役としています。弊社のスタジオとの連携も取りやすくなりますので、やり取りがスムーズになりますね。工数のキャッチアップも早くなって人数調整もしやすいですし、QA体制も安定させやすくなりますよ。

松橋氏: なるほど、企業によっては専任でQAの人がいない場合もありますので、QAのノウハウを知らない人が対応するよりも、IMAGICA GEEQさんから派遣して間を取り持ってもらった方が効果的という訳ですね。

――最後の質問ですが、弊社に望むことなどあれば是非教えてください。

松橋氏: リリース当初からIMAGICA GEEQさんにQAをお願いしているので、いわばパートナーになりますよね。Craft Egg側としてもIMAGICA GEEQさんを開発メンバーの一員と思っていますので、これからも皆さんには自分も作品を創っている一人だというふうに思っていただいて、モチベーションを高く持って今後も一緒に作品を盛り上げていただけたらなと思っています。